Yuki ONODERA
"Dog" and world is not small 1826

現代アーティストのオノデラユキの初期作品「Dog」から2点。そして、「World Is Not Small― 1826」から2点をご紹介いたします。誰もいない夜の街を徘徊して撮影された「Dog」は、シーツを被ったオノデラ自身が登場してみたり、被写体を多重に写し込んだりと、遊びや実験を突破口としてきた作家の姿勢がみられる作品です。「World Is Not Small―1826」は今こそ見ていただきたい作品です。世界中の地名、山、川、谷などの標識が、未踏の地への想像の旅へと我々を誘います。

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「World Is Not Small―1826」に出てくるこの標識。実は、オノデラユキによる自作です。それを、人物をキャスティングするような気持ちでアトリエの一室に集めて撮影したとのこと。メールでCAST表と地図を送ってくれました。このユーモアの感覚はオノデラユキの魅力のひとつです。

ちなみに、タイトルにある「1826」とはなんのことでしょう。

これは、世界で最初の写真がニエプスによって撮影される、1年前の年を表しています。オノデラユキが本シリーズで挑戦したのは、写真以前の世界のあり方をイメージすることでした。写真がなかった時代には、人々は知らない土地のことを、伝聞やイラストなどを手がかりに想像していたにちがいありません。標識とはいわば言葉ですが、写真がない時代の人々は、現実のその世界との間に、言葉から連想される空想の世界を持っていたのでしょう。

この空想の世界、あるいは世界への想像力に今一度思いを馳せてみるという行為は、インターネットの普及により簡単にイメージを手に入れることのできる現代では、ほとんどみられなくなってしまったのかもしれません。しかし、このことは、「見る」に限られたことではなく「知る」ということにも深く関わっているように思います。

「見る」や「知る」というのは、情報にタッチしたことで得られることではなく、もう少し時間をかける必要がある行為だったと思います。

2021年は、移動が許されない時間でした。こういう時だからこそ、言葉の先に広がっているであろう世界へ、想像力をはたらかせることは、意味のあることなのではないでしょうか。

 

​ニエプスという名前が出てきましたが、オノデラユキは2006年に世界で最も権威のある写真賞であるニエプス賞を受賞されています。

Dog no.1
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「Dog」は初期の作品群で、知る人ぞ知るレアなシリーズです。夜の街を徘徊するように、カメラをぶら下げて歩き撮影したという本作は、いわゆる、偶然を狙うようなスナップショットとは一線を画した、創造性豊かなシリーズです。

まだ、何を撮ったらよいのかわからない、という暗中模索の時代の作品とのことですが、暗さはなく、夜の中で光を見つけようとするオノデラユキの姿勢に、逞しさと、勇気をもらえた気がしました。

フランスのロックダウンが明けたタイミングで、作品保管庫に行ってもらい、初期作品を発掘してきてもらったなかで、もう一枚の機関車の車輪の作品が「出てきた」そうです。

ご本人さえも、すっかり記憶の彼方に仕舞われてしまっていた作品だったとのこと。

​嬉しい発見でした。

Dog ©︎Yuki Onodera

Dog ©︎Yuki Onodera