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Introduction -Who is Jonas Mekas? In the first installment, we will introduce him along with a retrospective of his life's trajectory and important works.-

Jonas Mekas Part 2 

 “ これらの映像はわたしの映画からとりだしたものだ。しかし、もうわたしの映画ではない。また写真でもない。それでは、何なのだろうか ”

元:ジョナス・メカス(1997)『フローズン・フィルム・ブレームズ −静止する映画 ―』木下哲夫訳, フォト・プラネット編, 河出書房新社. p.9

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From "JONAS MEKAS DIARIES NOTES AND SKETCHES" Photo by RIVORA DVD Box "JONAS MEKAS DIARIES NOTES AND SKETCHES" の付録

前回は、リトアニア人のジョナス・メカスさんがアメリカで活躍し、「アヴァンギャルド映画の父」と呼ばれるにいたる物語を断片的にお伝えいたしました。生誕100周年にあたる2021年からは世界中でメカスさんの作品を紹介する、Jonas Mekas 100! が開催されました。詳しくはPart 1の記事をお読みいただければと思います。

Jonas Mekas 100!

さて、このT-Shirtsプロジェクトにはふたりのキーマンがいます。ひとりはご子息のセバスチャン・メカスさん。彼の協力なくしては実現できませんでした。そしてもうひとりが、セバスチャンと引き合わせてくれた「ときの忘れもの」の綿貫不二夫さんです。

Part 1 でも少しだけお話ししましたが、T-Shirtsになった作品「Frozen Film Frames」の誕生に、実はこの綿貫さんが関係しています。ここではそのお話をしたいと思います。

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Materials about Jonas Mekas Photo by RIVORA 日本でも人気のメカスさん。関連本がたくさん出ています。また、2023年にフランスのRE:VOIRから、DVD Boxが発売されました。

冒頭のメカスさんの言葉にある通り「Frozen Film Frames」は、映画のために撮影した16mmフィルムから数コマの一部を抜き出し、シルクスクリーン(版画)で刷った作品です。

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(C) Jonas Mekas, From the series " Frozen Film Frames "

1983年、ジョナス・メカスは初来日をします。その目的は、彼が仲間たちと1970年からはじめた実験映画を保存する、アンソロジー・フィルム・アーカイブズの移転計画のためでした。

メカスさんは自身が撮った映画だけでなく、同じように活動する作家による自主映画を保管し、上映する場を作ろうとしていました*1

 

商業映画とは違って監督がひとりで制作、管理をしているような映画は、監督自らが守ってあげないことには残りません。また、フィルムという物質に記録される当時の映画は、誰かが保管しないことにはいつか世界から消えてなくなってしまいます。

 

映画を愛し、映画をつくるメカスさんにとって、保管は別の意味でも重大な問題でした。なぜなら、彼はただ自分で映画を楽しんでいたわけではなく、いろいろな人々と分かち合うことにこそ重きを置いていたからです。だからこそ、自身の制作活動と同じようにアーカイブ活動に力を入れたのです*2。

*1 綿貫不二夫「メカスさんの初来日、初めての展覧会、初めての版画とカタログ制作」『ジョナス・メカス論集 映像詩人の全貌』neoneo編集室,2020.

*2 岡田秀則「アンソロジー・フィルム・アーカイヴス ー ジョナス・メカスの映画保存所] 「NFCニューズレター」第66号, 2006.

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(C) Jonas Mekas, From the series " Frozen Film Frames "

それにしても、撮影済みの16mmフィルムを巻き取ったリールは、それなりの大きさがあります。60分にまとめるならば直径は40cm近くになります。それが何本もあると考えると、保管にはかなりの場所を取ることになります。

 

また、ただ保管するだけではなく上映会も行わなかければ「分かち合う」ことはできません。つまり劇場が必要となるわけです。

 

拠点としていたニューヨークに映画館と図書館が一緒になった施設を作ろうとしていると考えていただければ、それがいかに大きなプロジェクトだったかが伝わるかと思います。メカスさんは、いつも資金集めに四苦八苦しながら、それでもアーカイブを諦めることはありませんでした。

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(C) Jonas Mekas, From the series " Frozen Film Frames "

さて、そんなメカスさんの情熱に心を動かされたのは、当時、彼の活動を応援する芸術家の仲間たちでした。名前をあげればきりがありませんが、アンディ・ウォーホル、リチャード・セラ、ヨーゼフ・ボイス、ロバート・ラウシェンバーグらといった錚々たるアーティストたちが彼に無償で作品集などを提供したそうです。ところが、それらはうまくお金に換えることができずにメカスさんのアパートに積まれたままの状態だったとか。

それを知って何か自分にできることをしたいと考えた綿貫さんは、2つのことを提案します。

 

まずは、メカスさんの元に集まった芸術家たちの版画集や作品を日本で売ること。そしてもう一つが「メカスさんの版画をつくり展覧会を開くこと」でした。

 

当時、現代版画センターを運営していた綿貫さんには、優秀な刷り師と、日本全国に幅広い版画販売のネットワークを持っていました。ちなみに、この現代版画センターについては、2018年に埼玉近代美術館で大規模な展覧会が開催され、このプロジェクトのユニークさが再評価されておりますが、とにもかくにも、今から40年前の綿貫さんの提案がきっかけとなり、「Frozen Film Frames」が誕生したというのは凄まじいことです。

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(C) Jonas Mekas, From the series " Frozen Film Frames "

和訳すればそれは「静止した映画」と呼ばれていますが、ジョナス・メカスの映像世界を違った形でみることができる。このことは他でもないメカスさん自身にとってもおおきな発見だったようです。

 "映画のコマを静止させる可能性にわたしはとりつかれた。たまたま好奇心をそそられて始めたところが、おもしろくてやめられなくなってしまった。この映像が何なのか、本当のところわたしにもわからない。それでも、記憶の一部であることはまちがいない。そうした記憶のかけらをくりかえし見るのが、わたしは気に入っている。" 

引用元:ジョナス・メカス(1997)『フローズン・フィルム・ブレームズ −静止する映画 ―』木下哲夫訳, フォト・プラネット編, 河出書房新社. p.9

 

「記憶のかけら」というのは、メカスさんの映画が日記映画と呼ばれるように、身近な出来事を記録したものだからこその言葉だと思います。映画が流れを持った記憶のつながりだとすれば、「静止した映画」は「記憶のかけら」だということを、直感的に私たちは知っています。そのかけらは、メカスさんのコマ撮りのリズムのように、一呼吸ほどの時の間を持ち、あるところで突然途切れ、別の画面につぎはぎされます。それは決して早過ぎず、かといって遅くもなく、思い出すと嬉しい場面のように感じます。

前回、メカスさんが大変な苦境のなかでニューヨークに亡命してきたことや、人の喜びを捉えたいと考えていたことに触れましたが、静止した映画として分かち合うのもまた、生を謳歌するようなシーンに溢れているので、元気付けられる。それが本作の魅力なのかもしれません。

*

さて、83年に初来日したメカスさんですが、一連の努力はアンソロジー・フィルム・アーカイヴズ(Anthology Film Archives)として結実します。建物はニューヨークにある古い裁判所だった建物で、入手こそ先にできていたものの、1988年にようやく保管部門や劇場を兼ね備えた映画施設として始動し、息子のセバスチャンをはじめメカスさんらの遺志を継ぐ者や、映画を志す若者たちの手によって、今日もその活動は引き継がれています。

そして、綿貫さん。現在、綿貫さんがいるのがギャラリー兼編集事務所「ときの忘れもの」です。「現代版画センター」(1974-85)や資生堂ギャラリー史編纂室を経て、1995年にパートナーである令子さんと南青山ではじめられ、版画をはじめとするアート作品を多くのひとに分かち繋いできた場所です。現在は、南青山の建替に伴い東京・文京区駒込のとびきりモダンな建物へと移転されています。「Flozen Film Frames」はもちろん、近現代の版画や絵画を中心に彫刻やインスタレーションなども扱うギャラリーです。ぜひ、こちらへも足を運んでみてください。運が良ければ綿貫さんのお話を聴けるかもしれません。Tシャツも一部お取り扱いいただいております。

Jonas Mekas 100!

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Sebastian Mekas

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Reiko Watanuki

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